ビジネス

ブロックチェーン技術を活用し、貧困とフードロスの課題を解決するスタートアップ「Goodr」

cryptobox

Goodr

  • 創業:2013年
  • ファウンダー:Jasmine Crowe
  • 調達額:410万ドル(約4億6,300万円)
  • ビジネス:ブロックチェーン技術を用いた廃棄食品の再配分マネジメント

すれ違う食品ロスと飢餓問題

食べ物を大事にする。そのような教育を受けて育った日本人はどのくらいいるでしょうか?

おそらく国民の半分以上は当たり前のように耳にしたことがある言葉だと思います。

そんな日本において2021年の食料廃棄物は約2000万トと言われています。スーパーで売っている10kgのお米の袋を20億袋分のまだ食べられる食品が毎年のようにゴミとなって捨てられています。

一方、日本で飢餓に苦しむ方の割合はおよそ10%人口のおよそ11人に1人が飢餓に苦しんでいるという結果が出ています。

世界に目を向けてみると現状はさらに深刻です。

アメリカでは、食料の供給量の30~40%が消費されないままに廃棄され、その廃棄にかかる金額は年間で1610億ドル(約18兆2,000億円)にのぼります。

廃棄された食品は、腐るとメタンガスを放ちますが、これは世界の温室効果ガスの8%を占め、気候変動にも大きな影響を及ぼしています。

その一方で、日本と同様世界でも9人に1人にあたる約8.2億人が飢餓にあえいでいます(2018年時点)。これは後進国に限ったことではなく、米国では4,000万人(1,200万人の子どもを含む)が日々食べるものにありつけず、人間としての基本的ニーズを満たすことができていません。

食料廃棄物の量は増える一方で、飢餓に苦しむ人も増えている。という矛盾する社会問題解決に自治体やNPOを中心に対策をいくつも打ってきましたが、フードバンクの行列は絶えることなく、むしろパンデミックの影響で貧困・飢餓はさらに深刻さを増しているのが現実です。

この社会課題に取り組むGoodr

「飢餓は食糧ではなく物流の問題」と捉え、ブロックチェーンという最新のテクノロジーを駆使して、この問題に取り組むのがアトランタ発のスタートアップ「Goodr」です。

大企業やイベント会場から出た食品廃棄物を、食糧不足に苦しむ人に再配分する廃棄物マネジメントを行っています。余った食品をピックアップして食糧不足に苦しむ人へ届ける最適ロジスティクスを提供しています。

Goodrのユーザーがスマホのアプリで廃棄食品の回収をリクエストすると、そのうちに回収され、食料を必要としている届け先とリアルタイムでマッチングされ、その足で届けられます。

回収して一度プールする工程が省かれすため、日持ちのしない生鮮品や調理済みの食べ物の無駄も最大限に抑えられます。

届け先は、NPOのフードバンクや学校など様々です。Goodrが学校内や屋外などに設置したスペースに届いた食品は、誰でも欲しいだけ持っていってよく、自分が適切と思う金額を払う仕組みです。パンデミック期間の休校時には、貧困世帯の約4万人の生徒の自宅に食事を届けました

またGoodrはフードロスマネジメントのSaaSも提供しています。米国では州単位でフードロス削減が義務化されたり、SDGsの観点から企業が自ら目標を設定するケースもあります。Goodrはフードロス計画と実績を可視化し、目標達成を支援する管理ツールを提供しています。

洗練されたビジネスモデル

食料廃棄物の引き取りから、運搬、受け取りまでの一連のプロセスは、ブロックチェーンを活用したデジタル台帳に記録され、事業者は、ウェブサイトやスマホアプリ上の専用ダッシュボードでいつでも余剰食料の寄付の履歴を追跡することができます。

Goodrが構築したリアルタイムの集荷と配送網は、Uber EatsやDoor Dashなどのオンデマンドなデリバリーサービスの、逆方向への応用です。いわば、Uber Eatsが食事を届ける「動脈」とすれば、Goodrは廃棄を回収する「静脈」であり、これら先端テクノロジーのリサイクルへの適用です。

Goodrはフードロス削減を望む企業などから課金を行いますが、顧客にとってはフードロス削減によって税務上の還元を受けられます。行政への税還付手続きまで支援することによって、利用企業のコスト負担を軽減し利用ハードルを下げています

神は細部に宿る工夫

空港のレストランは、乗客の時間制約のため食事は半調理済みで、保存が効かずフードロスが出やすい環境です。Goodrを導入したアトランタ国際空港では、当初は従業員がスマホを持たなかったり家に忘れたりしたためうまく運用ができず、100軒以上ある飲食店のPOSレジにGoodrのソフトウェアを実装しました。結果、フードロスを47%削減し、アトランタ市のNPOなどへ13万食の食事を提供し、8.5万ポンド(約3.9トン)のCO2排出を抑え、飲食店に20万ドル(約2,300万円)の税還付を戻したそうです。

Goodr創業者ジャスミン・クロウ

Goodrを創業したジャスミン・クロウさんは元々慈善活動コンサルタントとして活動していました。

クロウさんは幼少期からボランティアに興味を持っていましたが、フードバンクの配給活動を行った際に、「食料(food)と食事(meal)は違う。これまでの飢餓対策は間違っている」と食品廃棄物と飢餓問題の矛盾を目の当たりにします。

Jasmine Croweさん

自身も決して恵まれた環境で育ったわけでなく、貧しさがどういうものであるか、身をもって知っています。ボランティアする側の自己満足で場当たり的な助け合いが根本的な解決への意識を削いでしまうと、クロウは危機感を抱き、立ち上がることを決めます。

その後、国内で2番目に大きな黒人大都市圏であるアトランタに引っ越すと、街に溢れるホームレスの多さに驚きます。使命感に突き動かされ、ひとりで始めた毎週日曜の暖かい食事を提供する手作りの催しが、Goodrの原点です。アトランタに無料の食料品店を短期オープンさせたりと、SNSを通じてクロウの活動は注目を集めました。

https://goodr.co/

食事の目的は、生きるだけでない。食事によって人は幸福を感じ、尊厳を維持する」──このシンプルで力強い信念こそ、多くの人や企業に共感を巻き起こす社会起業家としてのクロウの真骨頂です。

社会起業家として「飢餓という問題に、自分の世代で終止符を打ちたい」との思いでこの問題を解決している彼女をこれからも応援していきたいです。

この記事を書いた人
ポパイ
ポパイ
仮想通貨・Web3ブロガー
仮想通貨やNFTに夢中な副業サラリーマン。仮想通貨投資歴3年目。本業はスタートアップのBizdev。
記事URLをコピーしました